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ビジネスで役立つ「ゲーム理論」——囚人のジレンマ、オークション理論……

(写真=PIXTA)

合理的な意思決定を行う者同士がお互いに影響されながら意思決定をする中で、どの様な戦略・戦術を取るべきかを数理モデル化した「ゲーム理論」。

 小難しく聞こえるかもしれないが、要するに「こっちがこうしたら、あっちがこう動いてくる、だからこう動こう」というやり取りを研究した極めて現実に即した理論だ。

 商談の場や入札などで起きる現象について、ゲーム理論で説明ができることが多い。ここでは3つのシチュエーションを挙げながらゲーム理論について解説する。

「価格競争を仕掛けると双方損をする」−−囚人のジレンマ

 自社と同等の製品を持つライバル企業と、ある案件についてコンペ合戦となった。性能やデザインでは大差が無い時、おそらくは価格が最重要となるであろう。

 もし価格も同等であったらどうするか。どうしても案件を取りに行きたい場合、ライバル企業が出すと想定される価格よりも低い価格を提示するだろう。

 しかし、ライバル企業も価格を下げて来た場合、さらなる低価格を掲示しなければならない。そして、もしライバル企業がそれも見て更に価格を下げて来たらどうするか。

 このように価格競争はおうおうにして起きてしまう。これはゲーム理論における「囚人のジレンマ」をあてはめれば理解できる。

 「自分だけが抜け駆けをして価格を下げれば得をする」と両社が考えた場合、両社共に抜け駆けをする。最終的には原価の近い部分でお互いに落ち着き、同額となり価格競争は止まるが、当初よりも価格が下落して均衡してしまい双方が損をしてしまう。

 数年前の牛丼の価格競争は記憶に新しいが、価格競争の結果、牛丼の価格は下がったが、どの企業も収益性が低下し市場規模も拡大せずに、喜んだのは消費者のみであった。価格競争を仕掛ける際には囚人のジレンマに陥らないか十分に検討しないといけない。

「売り手と買い手が公平な立場になるには」——オークション理論

 公開型の入札、例えばオークションの場合や株式の板や国債の入札の際、どの様な状況が生まれるだろうか。

 多くのオークション、入札の場合、一定の金額まで上がった以降は少額の金額で少しずつ底値を探っていくような形になり、売り手が一方的に弱い立場になってしまう。それを防ぐために効率的で優れた市場を作るのがオークション理論だ。

 現在、多くの入札方式で利用されている方式が「第二価格オークション」。一番高い入札額の者が2番目に高い入札額で購入できるルールで、広告業界などでも利用されている。

 通常のオークションでは入札した金額購入することになるので、購入できた際にも、もっと低い金額で購入できた可能性が起こりえる。

 しかし第二価格オークションでは、自分の入札額を下げても、2番目の価格で購入するので購入価格は変わらない。誰にとっても、他人を気にすることなく自分の買いたい価格を入札することが支配戦略、一番強い戦略となる。

 「正直が最善の策」となるので、参加者は意思通りの価格を入札することができるため、安定し、また信頼性がある市場が形成される。この様な市場においては、色々と複雑な事を考え、他社を出し抜こうとすると支配戦略ではなくなり、むしろ一人弱い立場となってしまう。

 新しいマーケットに参入する際に、その市場はどの様な構成がされているのか、どの様な仕組みになっているのかを見る事で最適な戦略を選択していかなければならない事を示唆する理論である。

「なぜ談合は無くならないのか」——ナッシュ均衡と協調行動

 あってはならないことだが、「談合」はいまでも問題にはなっている。前述の囚人のジレンマに照らし合わせれば、抜け駆けをするべきであって、談合を行う事は合理的では無いようにも見える。なぜ談合はなくならないのだろうか。

 最大の理由は協調行動ができるか否かだ。囚人のジレンマの例ではライバル会社と自社は協調行動は行わないことが前提だ。

 しかし入札、例えば公官庁における土木工事入札であれば事前審査を通過した企業のみとなる為、毎回ほぼ同じメンバーでの入札となる。「入札」というゲームが同じメンバーで繰り返され事となる為、協調行動を取って恩の貸し借りをすれば「次回は御社にお渡ししますので、今回は当社がもらいます」といったふうに談合が可能となる。皆均等な回数で、しかも高値での落札も可能となる為に談合が魅力的になるのだ。

 現在公官庁では談合を防ぐために、価格だけでなく、地元業者なのか、環境対策を行っているかも含め、価格だけではないところを含めて総合的に評価する「総合評価落札方式」と言う物を導入している。

 だが談合は完全にはなくならない。今後も官公庁と業者間における対策のいたちごっこは続くだろう。

 「ゲーム理論」は市場参入の戦略や交渉の際のフレームワークとして、またもっと身近な、日常業務でもできる考え方だ。ビジネス以外の行動でも——たとえば消費者として——何気なく考え取っている行動が、ゲーム理論で説明できることも少なくない。いくつかの基本的な考え方に触れておくだけで、いろいろな場で役立つだろう。 (提供:ZUU online)